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政虎、政なつ、愛の形 ~32回 おんな城主直虎~

ずっと見てきた物語のある意味クライマックス。ほんの少し伝わっている史実から紡ぎ出したおはなしがこれほど尊いものになるとは…

 あらすじ

信玄松平健)と家康阿部サダヲ)による今川攻めが避けられない状況になる中、政次高橋一生)は虎松寺田心)の偽首を差し出すことで氏真尾上松也)の信頼を得ることに成功する。政次と裏で手を結ぶ直虎柴咲コウ)は家康に書状を送り、徳川の遠江侵攻に協力する代わりに井伊家を復活し家臣の列に加えてほしいと願い出る。そんな中、ついに武田による駿河侵攻が始まる。その破竹の勢いに今川国衆の寝返りが相次ぎ、氏真は絶体絶命の危機を迎える。政次は戦を前にし、なつ山口紗弥加)と夫婦になる約束をする。一方、井伊谷三人衆は軍を進めつつある家康に味方することを決め、領地安堵の起請文を交わす。徳川軍が井伊谷城に近づき、政次は城を明け渡して徳川方につくことを宣言。門前では直虎が取次をするべく待ち構えていた。しかし、突然弓矢が徳川軍に襲いかかった。

 

第32回「復活の火」|あらすじ|NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』

 

 

今週の雑感

政次がいなくなる、ということはわかってはいるけれど、できるだけネタバレを避けてきた私にとって、政次がなつに求婚する場面の衝撃は言葉にすることはできません。そこで頭が真っ白になってしまい32話の内容があまり入ってこず… 情けない。

 

ちりぢりになった頭をどうにかこうにか立て直しつつ。

 

政虎

久しぶりの囲碁の場面。政次の真意を図りかねていた直虎にとって、徳川から安堵できる書状が届いた矢先に政次が現れてダブルでほっ…ですね。井伊の行く先も良い方向に向かう兆しが見えかけてきて、今川の重臣だった関口もいなくなり、政次も龍潭寺に来れた。

 

偽首や地獄は俺が行く、で抉られ続けた前回に比べてじわじわと暖かいものが… 

 

なにより、政次の、全てから解かれた顔の清々しさが際立っていて、心からほっとしていて胸が弾んでいるような身体が軽くなっているような、そんな佇まいを見ていて、ようやくここまで…良かった…と。

 

直虎と軽口を叩き合っているのが幸せそうでこちらもじわじわ来ました。そして、直虎が何かをこころに決めたかのような表情で言います。

 

直虎「その…もしそなたが主の座に留まりたいと思うのならば、我はそれでかまわぬと思うておる。此度のことが終われば今川を欺かずともようなるわけであるし、いろいろとやってはきたが、やはり我がこの役目にはむいておるとは思えぬしな」

 

これって… どういう意味だろう??確かに何かが起きたとき、和尚様に自分は領主にはむいていない、と再三嘆いていたけれど、今回の偽首の件でやはり政次には敵わないと思ったのか…?それとも…

 

もしかして、領主を降りる→還俗する→政次に嫁す という可能性を政次に示唆したのかな… わからない。わからないです。

 

政次がそれを聞いたときの顔がとても緊張していて、たぶん、その可能性が一瞬頭を過ぎり、自分の唯一の願いであった”おとわ”を嫁にする未来、自分だけのものにする絵を思い描いたんじゃないか。ほんとにほんの一瞬だけ。

 

それでも、その考えを打ち消す。覚悟をもってここまで井伊を率いてきた直虎を対外的にも制度的にも嫁にするのをきっぱりと諦め、主君としてのみ仕えていこうと決めた瞬間なのかもしれない。名付けることのできないような思いを抱えながらひたすらこの人の為に家臣として生きていこうと思ったんじゃないか。

 

政次「降りる道などもはや許されませぬ。殿には。
 
 
「後見を降りられよ、御身のためだ」
「 あいつの夢枕にでも立ち言うてくれぬかの、亀。危うくなるゆえ早く下がれと」
「おとわ、今からでも遅くはない。後見を降りると言わぬか」
 
何度となく後見を降りることを直虎に迫っていた政次が、とうとう「殿」として頂くことを決めた。これまでのふたりの関係を見ていて、とても感動的な場面なのだけれど、寂しい。ようやく政次に認められて嬉しいはずなのに、(私が)寂しい。直虎のこの後の涙もたぶん様々な意味を持ってると思うんです。
 
18話から共に戦ってきた同志として、直親を含む3人の絆や縁、井伊を復活させることができる喜び、そしてもう後に引けない自分の行く先に思いを馳せたのかな… 嬉しい。けれど寂しい。そういう感情がふたりにある気がする。
 
井伊を今川から解き放ち、小野が家臣とともに名実共に井伊家の家来となる。その悲願が達せられようとしているのになぜか、このふたりの関係のこれまでの濃密さと共犯共闘関係に未練があるような… (私があるだけかも…)

 

ここで言葉を使わずに直虎を見て顔で促すような仕草をするのがすごい…!!!

 

 

直虎「もうじき… 陽の光の下で打てるようになるの」
政次「はい」
 

 

 ここの美しさ… 次郎法師の直虎も、総髪の政次も、月の光も全てが美しくて幻想的で、最期に至る前の静謐さと穏やかさで胸が詰まってきます。

 

特に直虎の政次への眼が優しくて愛らしくて、政次を失うことなどこれっぽっちも思っていないただただ井伊を共に支えてくれる政次への慈しみというか、恋愛感情ではないかもしれないけれど、特別な愛情であることは間違いないと思います。

 

直虎が潜在的に持っている政次への感情。これはこの時点ではまだ自覚していなくて、この先に彼女がどうしようもなくその感情に押しつぶされる時が来るのではないか、と思ったりもしています。

 

 

政次となつ

これが… どうしても納得できずに認められなくて木曜日になってしまいました。今日ようやく2回目を見たのですが…

 

日曜以来、いろんな思いが沸いてきました。どうしてここに来てこういう展開にするんだろうか。政次は直虎一途だからこそふたりの関係に惹かれてきたのに。直虎への気持ちとなつへの気持ちは両立するものなんだろうか… etc.

 

ようやく、考えが纏まりました。いろんな考え方があると思うのですが…

 

政次は、仮面を被って生きてきました。直親の命と井伊家を天秤にかけて井伊家をとった時以来、今川から井伊を護るために付けた仮面。最初は誰にも理解されず、直虎にも蔑まれ睨まれ、どれだけの思いをもってここまで来たか。

 

そんな時にも、なつだけは小野家を捨てず、亥之助と共に残って、皆から疎まれているからこそ「お勤めも励み甲斐があるというもの」とにっこり笑っていた。両親とも弟とも早くに死に別れ、誰一人として自分を受け止めてくれる人が居ないなかでのなつの存在がどういうものであったか。

 

ようやく今川の縛りから抜け出せる、仮面を被る必要がなくなって、昔の鶴の素顔笑顔が取り戻せた。

久々にみる満面の笑顔。こころから笑ったのは久方ぶりでしょう… そんな時、

 

 なつ「徳川が来れば終わりにございますね、わたくしのお役目は。ふっ。もう今川を欺かずともようなりましょう。これでやっと肩の荷が下ります」

 

そんな言葉をなつが明るく言う。今までの「役目」が政次にとってどれほど大切なものであったのか、いつも傍で見守り励ましてくれたなつを、家族として愛しいと思う気持ちを改めて思い返し、そのなつを手放したくないと思ってもおかしくない。

 

「家族」という意味合いで(弟玄蕃への義理立ても込めて)「一緒にならぬか」と言ったんではないか。だから、「もちろん形ばかりの夫婦ということだが…」と『もちろん』という言葉を付けて強調し、表向きだけの夫婦で実質はないものとして(契りはないものとして、初めから頭にない、感じ)傍にいて欲しい、という思いで言ったのではないか…

 

だから、なつに直虎の還俗のことを出された時にも少しばかり動揺しながらも、馬鹿正直に気持ちを述べたし、直虎への気持ちとは全く別の次元でなつにいてほしいという気持ちは両立すると思いました。

 

それなのに、なつが自分の方へ近づいて身体を預けてきた。その時の表情、

 

 驚いたというか呆然というか固まっている感じが…

 

なつ「然様な時には殿のことはもう何とも思うてないと、そう言うものですよ」

 

と言われた政次は、一瞬、あ、という顔をした後瞬きをして、ああ、そういうことだったか…と彼女の気持ちを知ってしまったんだと。

政次は「それとは全く別の気持ちで傍におってほしい」と表した言葉は家族としての愛情 であったけれど、なつの思いは少し政次とは違っていて、家族+慕う だった。それでも、なつの以下の言葉から、ふたりが男女の仲にはならないのではないか、と思うんです。

 

なつ「致し方ありませんね。わたくしがお慕い申し上げておるのは然様な義兄上さまにございますゆえ」

 

もし、男として愛しているのであれば、「義兄上」というような言葉を使うだろうか…?「政次さま」と呼んだっていいのではないか。8回「赤ちゃんはまだか」で、直親しのに子供が出来ないことを悩んだ直虎が政次のもとへ麝香を買ってくれるよう頼みにきた折り、子に恵まれる秘訣とは何であろうの、と玄蕃となつに聞いたとき、赤ちゃん(亥之助)をあやしながら「愛です」と答えた玄蕃。このふたりの仲睦まじさから考えるに、なつだって政次を慕いながらも「義兄上」以上の思いは自分に封をしてきたのではないか…

 

だから、なつの「致し方ありません」というのは、表向きだけの、形だけの夫婦でも仕方ない。義兄上のことは慕っているけれどもそれ以上の関係になれないのも仕方ない、と言ってるような気がします。(私が見たいように見ているだけだと思います…違う考え方もたくさんあるかと)

 

そんななつの思いを受け止めて、政次は自分はひどい提案をしてしまったのではないだろうか…?と憂う表情に見えました。

 

なので、政次のキャラクターにブレはないし、今まで尽くしてくれたなつへの感謝も義妹としての愛情も全てこれまでと同じだし、直虎への生涯の愛にも変わりはないというのが私の結論です。33話を見てまた考えが変わるかもしれませんが…

 

 

随分長くなってしまいました。

まだまだ近藤殿のこと、小野のこと、呪いのことなど、書きたいことが山ほどあるのですが… とりあえず上げます。

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お越し下さりありがとうございました。

 

どうにもここがすっきりしないと33話に進めません…

 

あじさい