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ふたりが辿り着く場所 ~18回 おんな城主直虎~

18回が終わりました。ほっとしたような、落ち着かないような、嬉しいような、哀しいような。

 あらすじ

直虎柴咲コウ)が秘かに作らせていた「種子島」を奪った政次高橋一生)は、今川への謀反の疑いを直虎にかけ、虎松寺田心)の後見を降りるようせまる。観念した直虎は後見を譲ることを約束し、政次とともに駿府へ向かう。しかし方久ムロツヨシ)は駿府の今川館へ先回りし、今川氏真尾上松也)に「種子島」を売りつけることに成功。井伊が「種子島」を製造しようとしたのは謀反のためではなく今川に買ってもらうためだった、という理屈で直虎の窮地を救う。上機嫌の氏真の元に、縁戚である武田家の嫡男・義信が謀反の罪で幽閉されたという知らせが届く。
そんななか直虎は、当主としての心得が記された書物を南渓和尚小林薫)から手渡される。書物に書かれていた「敵を欺くには、まず味方から」という一文を読んだ直虎は、ひとり矢面に立って井伊を守ろうとしてきた政次の真意に気づく。直虎は政次を訪ね、敵も味方も欺くことで守る兵法があることを知ったと話す。そして、政次なら井伊をどう守っていくのか問うのだった。さらに直虎は「井伊を守ることは己で決めたことだと」告げる。政次はすべてを見透かされたことに気づき、自分なら戦わない道を選ぶと直虎に言う。 第18回「あるいは裏切りという名の鶴」|あらすじ|NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』

 

今週の雑感

今週は書きたいことがあまりに多すぎてまとまる気がしません。

 

方久の金への執着ぶりと主君を助ける智慧とのあわせ技であるとか、政次の真の思いを密かに察しているなつの何とも言えない芳香であるとか、直之の、え、ここまでデレる家臣になっちゃったの?!的可愛らしさとか、にゃんけい和尚さすがだなぁとか。

 

今週は政虎関係がある意味ひとつの終着点を迎えました。そのことについて。

 

12話での闇落ち以来、視聴者となつと南渓和尚以外を上手に騙してきた政次でしたが、とうとう、というか、やっとというか。その政次に対して、直虎がなつと母祐椿尼との会話から、そして古い書物を読んでひとつの疑問を持ちました。

 

政次はずっと井伊を守るために自分や周りを欺いてきたのでは?

 

その問いの答えを和尚の寝込みを襲って確かめにいきます。和尚は今までも直接の答えを与えるという甘いひとではありませんでした。今回も、それがはっきり正解だ、とは言いません。

 

そうであれかしとは思うがわからぬ。私は政次ではないからのぉ。じゃがあれは優しい子じゃ。おぬしの言うとおりかもしれん。もし仮にそうだとして、おぬしはどうするのじゃ。その思いにどう答えるのじゃ、直虎よ。仲良しごっこをしていては政次が積み上げてきた策は水の泡となるだけぞ。   南渓和尚

 

幼馴染の直虎と政次がお互いの本音をさらけ出し合って、ああ、そうだったんだね~、よかった~、ありがとね~と泣きながらハグし合えるような仲良しごっこが許されるような時代ではない。

 

周りの強大な国に挟まれてその時代の流れに翻弄される小国にとって、そんなことは許されず、ただただ井伊というくにを守る為に何が必要で重要なのか、それを突き詰めて考えることが城主には求められるのですね。

 

政次が毛虫のように嫌われることで守ってきたもの、それを水疱に帰してはならない。この和尚の言葉は厳しいけれど、それが唯一、政次がずっと自分が盾となって今川からの追及をかわしてきた今までの努力と成果を無にしない選択であると直虎に気づかせる最重要ポイント。和尚さまの存在感の大きさを感じました。

 

政次の思いにどう答えるか。その方法。それを3人の思い出の井戸で、直親の存在も感じさせながら、直虎と政次が語り合う場面が今週のハイライトでした。

 

我をうまく使え。我もそなたをうまく使う。

 

直虎が政次へ本音を明かすことなしに、その意とすることのエッセンスだけを伝える言葉。

 

そして政次も、彼女が自分のやろうとしていることを見抜いたと察し、ずっと直虎に問うてきた城主としての覚悟ありやなしや、をこの直虎の言葉で確信します。直虎の真意を全て理解し、これから主従としてまことの関係を築いていくことを決心する政次の表情にこれまでの彼の思いが報われたような気がして涙しました。

 

 

でも。

 

積み上げてきたものを壊さぬようにするには、今川はもちろん、周りの家臣たちにこの政次の本意が伝わるようなことはあってはならず、これからもふたりは今までのように対立し続けるさまを見せるだろうし、今度は直虎側にちょっとした演技を必要とするのでしょう。

 

言うなれば、ふたりはこの井戸で、ふたりだけの秘密を共有し、それがバレた時には身を滅ぼすことになりかねないという、共闘体制、呉越同舟のような関係になった。それなのに政次の直虎への幼い頃からの思いにはまだ気づいていないという相当こんがらがった複雑さも残しているんですよね。ここがまたこの大河の面白いところ。

 

井伊というくにに生まれた幼馴染のふたりは、生まれたときから主従という枷をはめており、今回更にまたその枷を増やしてお互いの関係が単なる主従でもなく、恋愛に発展することもなく、性別すらも越えて、秘密を抱えながらも井伊を守るためという唯一無二の目的の為に生きる。

 

その枷は、私達から見ると戦国時代ゆえの宿命、運命、逃れられないものではあるのですが、でもふたりはそれを不自由とは感じてはおらず、そこへ自ら「自由意志」で飛び込んでいくのがもう…

 

そこらへんのことはTwitterで知ったリコさんのブログに詳しいです。とても素晴らしい考察をされているので是非。

 

http://scheherazade.hatenablog.com/entry/2017/05/09/201425

 

さて。こんなふたりの関係。もうワクドキを越えてひたすらこの先更なる深みへとハマり込んでいくのを見られるのか或いは高く高く飛翔して昇華していくのか、もう勘弁して…とこの先も更に視聴者を崩れ落ちさせたりするんじゃないかと、鬼のような本を書く脚本家の終着点を見届けたいと思っています。

 

今週の政次は、また次の回に書きますね。

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お越し下さりありがとうございました。

あじさい