今週の政虎(龍) ~23回 政次の心情を紐解きたい~
先週、皆に大きな墓を掘らせた超弩級ワード、「くだらんぞ」の続きなのですが、今回、乙女な直虎がわかりやすかったのに対し、政次の心情が先週からどう変化しているのかがイマイチわかりにくく、今でも霧の中にいるよう。ともかく私の感じたことをつらつらと書いてみます。長いです…
わかりやす過ぎる恋する直虎
引き続き、直虎の乙女な表情がここかしこに。龍雲丸に、「我のものになれ~~」と大トラしてたくせに、次の日には全く覚えてない。酒豪のくせに弱いっっていちばんしょうもないヤツ。
キュンキュンしてるのがあまりに明らかで、この場面なんか、やだ、もう政次見てなくてよかった…とほっと胸をなでおろしましたよ…
和尚がニヤニヤ
でも結局、恋してたのは直虎だけ(だと思う)。直虎に興味がないわけではないだろうけれど、面白い尼小僧だったなぁ、武家にもこんな酔狂なやつがいるんだなぁと、きっとこれまでの思い込みを払拭できて、でもせせこましく自由のない場所で生きるのはごめん、と誰にも属さず、誰をも束縛せずに生きていくんだろうな、龍雲丸は。
フリーランスと宮仕えとあこがれと
自由って良いことばかりじゃない。フリーランスで仕事をするっていうのは自分だけが頼みで。どこかに属して木材切り出しのお仕事もらって報酬を受取るのは自由は制限されるけれど、保障がある。武家に奉公すれば、病気になったりしてもきっと手当は出る。
でも、それを始めてしまうと、ずっと自分頼みでやってきた人はいつか堪忍袋の緒が切れる時が来てしまうかもしれない。直虎と決定的な亀裂が入ることなく、それぞれがお互いを尊重し合って助け合うっていうのが一番良い落とし所なんだろうと思います。
以前、木材泥棒として捕らえられたとき、
家なんざ、そこまでして守るものなんですかねえ。
と言っていた龍雲丸。生まれてから疑ったことすらない直虎や政次の家や土地に対する考え方に真っ向から疑問を投げかける彼の自由さは、男とか女とか恋とかじゃなく、お家が第一で生きてきた者にとって、それは叶わないけれど遠い夢なんだけれど、ちょっとうらやましい禁断の世界に見えるのかもしれない。直虎の恋らしきものはそこに起因しているんじゃないかなぁと。
政次の心情 1
近藤殿が夜半屋敷にやってきた時点で、龍たちを逃がすかどうかの判断をしなければ、と考える政次の回転と機転。井伊が賊を囲って木材切り出しをさせているという噂があると近藤殿が口にした瞬間、「逃がす」と判断。なつを龍の元へ。
目付けとして近藤殿と井伊の屋敷へ出向く政次。近藤殿の主目的は、寺の本尊が盗まれたので、井伊が囲っているという賊を改めさせろ、という事でした。ここでの政次の使命は、目付けとしての役目を見せながら、井伊に対して不満を持ち続けている(木材泥棒騒ぎの時には今川に対し直虎は後見に相応しくないと進言してはと言っていました)近藤殿の気持ちを落ち着かせ、直虎が後見に相応しくないという考えを変えさせ、納得させること。
脇の甘い直虎が自ら、その者たちが賊であることを認めてしまい、近藤殿の怒りは頂点に。すかさず政次は
恐れながら、近藤殿の訴えは理が通っておりまする。井伊はその者たちを引き渡すということでよろしゅうございますか。それとも、あくまでその者たちを匿いますか。
お答えを。
穏やかな信頼しているような顔
一生懸命政次の真意をはかる
ここは見ていて震えました。18回で共犯共闘主従関係を結び、木材泥棒騒ぎでは言いたいことを言い合い、隠し子騒動も乗り越え、信頼し合う仲になっていくのを見せての今回。お互いの呼吸や目や視線で考えていることがわかるようになっているように思うんです(期待も込めて)。
だから、この公の場で、誰もふたりのそんな関係を知らず、また絶対に知られてはならないという中で、政次はきっと直虎は「引き渡す」と言うだろうと信頼していた。泥棒を打ち首にしなかった時に問い詰めた、
殿が今守らねばならぬものはなんだ?!
が効いてきていると思うのです。あの時に直虎は、何をいちばん大事にすべきかを学んだはず。情けをかけた賊に逃げられ己の愚かさを痛感したはず。だから。今度は間違えない。正答を出すはずだ、と。
正答を導くための言葉選びもすごい。「あくまでも」という5字に込められた思いを直虎に理解してほしいとの思いがみえる。
家臣たちは未だに政次を今川の犬だと信じている中での、そんな言葉と、言葉によらない緊迫したやり取り、そして直虎が政次の期待どおり「引き渡す」と言った。お互いを使い合い、周りを欺きながら、一番大事なことのために動いている、手に汗握るような場面でした。
なんとまあ誰も立ち入れないところまで来てるんだろう、と驚嘆します。あくまで政治の話だけなんだけれど…
政次の心情2
政次が龍たちを逃がしていたことが六左を通じて直虎の知るところとなり、小野の屋敷へ話をしにいく。(タイトル下の写真)
ここのふたりの話し合い。何度か隠密会合をもっているけれど、小野の屋敷というのは初めてかも。ふたりの関係は小野の家のものは知っているのか。従者が控えているところでの話し合いだから、本音はなかなか言えないのか?政次の投げやりな感じが気になってしょうがない…
この会話のノリというか温度差というか、なんだか関係がギクシャクしているように感じるのは私だけかな…?長いけれど載せてみます。
直虎「具合が悪いのか」政次「大したことではござりません」礼をする直虎「あの者たちが戻ってきたことは知っておるな」政次「はい」直虎「あの者たちを家来にという話が出ておる。そなたもそれでよいか」政次「お好きなようになされば宜しいかと。その点については私は今口を出せぬ風向きにございますゆえ。」直虎「本音で話せ。あの者たちを守ってくれたのはそなたではないか。なつを使うて」政次「引き渡してしまえば殿はまた大騒ぎされましょう。それが面倒であったまで」直虎「それでは召し抱えるのは反対か」政次「申し上げたところで既にお心は決まっておりましょう」直虎「そんなことはない。此度のことについては政次の考えに従う。政次が誰よりも井伊のことを考えておるのは明らかじゃ」政次「反対は致しませぬ。ただし、あの者たちに致されませぬよう」直虎「致されぬ?」政次「あの者たちを井伊のために使うのは宜しゅうございます。ですが、あの者たちのために井伊を使わぬよう。もし然様なことになれば私は殿をまことに廃することを考えねばならぬかもしれません」直虎「わかった」
ふたりの会話の流れから、直虎はまっすぐに思いをさらけ出しているように見えるけれど、政次の方は最初はあまり乗り気じゃない。
この会話で気になったことを。
- 政次はいつもの敬語遣い
- 政次は一歩ひいて距離をとっている
- 「殿を廃する」というのがこの先のフラグにしか思えない
- 「本音で話せ」と言われも、政次がただ一点、直虎には言えない事実については隠すしかないので、またいつものいけ好かない言い方しかできない
- 19回の羽交い締めの時の遠慮のなさや囲碁を指している時に見せた穏やかな主従関係とは違う
- 何かが奥歯にはさまっている感じ
- 政次が纏っている何枚ものフィルター
- 珍しく、自分のことを「私」と言う → なつにも「私」を使っていた。落ち着いていて穏やかで距離が近いときに使うのかな
政次はいちばん知られたくない気持ちについてはないものにしようとしているのか。先週、嫉妬のような何か新たな感情が湧いてきたにも関わらず、「くだらんぞ」と一刀両断、結局その感情は近藤殿とのいざこざで考えている暇がない、というのも理由なんでしょうが、直虎が直親以外に好きな相手が現れる可能性があることを認識し、ならばもう黒子に徹するしかない、と思ってしまったのか…?
自分の心が乱されたり痛んだりするのを避けようとしてるのか?
最初の素っ気ない態度を見てると、早く話を終わらせようとしているようで。
なつとのやりとりで見えてくるもの
この小野屋敷での話し合いでの違和感がどうしても拭えず、ああだこうだと考えてたんですが、政次の気持ちが見えてきたのは、なつとのやりとりの中でした。
なつは、和尚以外に、政次の真意を悟り、隠している恋情までも気付いている唯一の人物でしょう。今回、合図をしたら賊を逃がせと言われたことでその「思い」に合点がいったのかもしれません。
なつ「貧乏くじをひかれ。風邪をひかれ。義兄上は賢いお方かと思うておりましたがだんだんとわからぬようになって参りました。」
「貧乏くじ」の意味。龍雲丸という恋敵が現れ、そのままほうっておけば井伊からいなくなるだろうに、わざわざ逃がすようなことをして、ということだろうか。
なつに言われた後の、困ったようなはにかむような、そんな政次の表情が、それ(貧乏くじ)を認めてますよね。
そして、龍雲丸を家来として迎えるかもしれない日に着ていく着物について。
なつ「綻びが…」
政次「それくらい構わぬ」
なつ「なりませぬ。ご家老は義兄さまじゃときちんと見せつけてやらねばなりませぬ。」
龍雲丸に「見せつける」。
なつの矜持。まるで恋敵に足元を見られてはだめですよって、お姉さんみたい。
この後の政次の表情が… なんだか見たことがなかったです。慈愛?というのかしら。もう仏さまみたいな。なつにはこんな顔するのね… なつの言うことを認めているんだなぁ。
ここでようやくあのやり取りの違和感が取れてきました。
政次の思いは隠したつもりでも漏れていた。龍雲丸に惹かれている直虎を見ているのは辛い。それでも龍が捕らえられて直虎が苦しみ悲しむのを見るのはもっと辛い。だから貧乏くじだろうがなんだろうが「逃がした」。
でもその辛い気持ちを持って直虎と相対するときには、自分を守るためにもフィルターをかけ、距離をとり、直虎に対して他人行儀な様子を見せた。
直虎が「政次が一番井伊のことを考えているのは明らか」と言ったとき、表情がちょっと緩んで大きく息を吐く。惚れた弱みもあるし、直虎から全幅の信頼を寄せられているのは明らかなことを感じて少し柔らかい顔になる。
龍を家来に加えることを反対する=自分の私情を挟むことにもなりかねない そういう事は絶対に避けたい。そして「次郎様のお好きに」が根っこにあるから、反対はしない。けれども。と条件をはっきり明示して、大事なことが何なのかを釘指すことも忘れず。
ここの、主が従に従い、従が導いていく雰囲気が堪らなく好きです。
結局、「くだらんぞ」と切り捨てたかに見えた感情は静かに政次の中にありますね。皆が、龍が来ることを喜んでいる時に見せた寂しそうな顔にも表れているようで…
それでも。直虎の喜びは自分の喜びとしてきた政次、龍がやってくる日に見せる表情は優しかった…
結局、龍雲丸は自由に生きることを選び、家来になることはありませんでしたが、今回の政次の献身ぶり、井伊の為、直虎の為、滅私奉公という言葉はこの人のためにあるように思えてくる回でした。
ただ、近藤殿がちょっと政次に疑念を抱いたのも見えたし、咳も気になるし、何より、政次の意向で龍たちを逃したことを家臣が気付いてしまったこと。今川の盾として動いてきた政次の立ち位置が揺らいできたようで… うう恐い。
まだ書きたりないのですが、一旦筆を置きます。
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