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MIU404<9話ネタバレあり>「羽野麦と成川が周りを救う」

9話「或る一人の死」

あらすじ

https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/story/vol9.html

 

タオル握りしめながら、眉間にしわを寄せながら、食い入るように画面を凝視してました、1時間。なんか8話からの流れでの9話、すっごかったです…

 

もうほとんど言うことはぜんぶTwitterにあるので今更な感じがしてしまって、今回何を書こうかなと、と悩んでおります。でもまぁ、今更だけど自分の言いたいことを書くしかないので始めてみます。

 

2人が出会う

志摩が手を伸ばせなかった元相棒香坂の死。伊吹が間に合わなかった恩人ガマさんの犯行。

 

そんな2人にとって、今回どうしても間に合いたいハムちゃん。3話「分岐点」で唯一捕まらずに家に帰っていない成川と絡め、かなり緊迫した流れにこころ震えました…

 

なんといっても、タイトルがね、誰かが死ぬことを予言しているので、どうしてもどうしても最悪な事態を予想してしまう。ハムちゃんが???あるいは成川が????

 

中でも、演出のすごさを感じたのが、ハムちゃんが取り調べを終えて警察署で伊吹たちを待っているところ。伊吹が来る寸隙を見計らって、成川が近づく。

 

既に会ったことがあって、相手が高校生で、その時に優しくしてくれたっていう記憶が、ハムちゃんの心の中にある壁を低くしてしまう。のが見て良くわかる。それにエトリから逃げている毎日の中で、桔梗さんとゆたか以外と話をしたい、というのは自然なこと。そして何より、自分が桔梗に助けられたからこそ逃げずに戦おうと言われたからこその現在であるから、誰か困っている人がいれば助けたい、と思うハムちゃんなんだよね…

 

次の瞬間には伊吹が迎えにきていて、隣に居たはずの成川はいない。警察署の外で澤部(辰井組の構成員)と落ち合い、去っていく。(ハムちゃんの)アドレスゲッチュと喜びながら。

 

その後すぐに伊吹とハムちゃんが署から出てメロンパン号に乗り組む。車に乗り込む寸前、伊吹が何かの勘が働いたのか、成川たちの走り去った方を見つめるっていうここら辺の一連のスローモーション含めた演出がね、このイントロでこの先どういう方向へ向かっていくのか、ハムちゃんの笑顔が弾けて眩しくて、だからこそ、心の中のざわざわが止まらないっていう…

 

この演出、ほんとうに好きだわぁ… 塚原あゆ子氏演出回だった… 神…

 

成川がここに絡んでくるっていうの、「分岐点」そのものなんですよね。ハムちゃんと成川が知り合って、成川はお金も欲しかったけれども、それでも「エトリを騙した女詐欺師」を捕まえることに正義を感じていたわけで。

 

今回かなり裕福な家に生まれ育ったんだろうことが分かった成川。エトリどころか「久住」の本性にも疑いを感じない、人を信じちゃうの、育ちの良さもあったからだろうと思うとめちゃめちゃ頷ける。で、最後の最後、久住に助けを求めたのに見捨てられたことでようやく、自分の置かれた状況を把握。

 

一緒に沈められてしまった。

 

でも、ハムちゃんがひとりで沈められずに、成川と一緒だったことで「間に合った」んだよなぁと思う。澤部じゃなくて、成川がエトリの所にハムちゃんを連れて行きお金を貰ったことで、そこに居合わせたからこそ。

 

野木氏が狙った9話のカタルシスにまんまとハマってしまったよ…

志摩伊吹が今回どうしても間に合いたいハムちゃん。そこに成川を介在させる。九重が3話で捕らえることのできなかった成川がハムちゃんを危険に陥れ、でも、最後の最後では「間に合わせた人」になる。

 

伊吹や志摩が心から絞り出す「間に合った…!!!!」そして、今度こそ成川に手が届いた九重をも救う。成川がこれ以上犯罪に手を汚すことなく、本人が死ぬこともなく、捕まえることができたことで。

 

「よかったなぁ、誰も殺さずに捕まって」1話の伊吹のセリフが思い出される。成川が誰も死なせる前に九重が彼を逮捕できたこと、それが尊い

 

ハムちゃんがエトリの車のナンバーを成川に託し、罪の意識でごめんなさいを繰り返す彼が、なんとか声を振り絞ったのを伊吹が聞き逃さず、それを志摩伊吹に伝え、エトリ逮捕に繋がる、その流れ。

 

桔梗隊長にとっても。自分を信じてエトリの情報を託してくれたハムちゃんをかごの鳥にしてしまった負い目。一緒に戦おうと言って鼓舞してきたその思いが報われ救われて…

 

どこにも居場所のなかったハムちゃんと、家にも学校にも居場所のなかった成川とのケミストリー。ハムちゃん、成川、それぞれの縦軸の今までと、志摩伊吹それぞれが持っている思いと、桔梗の信念、それらを全部合わせた救出劇に涙が止まらなかった。

一話の伏線・規則

最近ずっと1話を見なおしていて思うのは、この1話に詰め込まれてるこの先のお話のイントロダクション的役割の大きさ。パイロットともいうような。

 

伊吹「はあ~もしかして、規則にがんじがらめになっちゃう頭固いタイプ?」 志摩「規則は、必要だからある」 伊吹「OK」

 

志摩「緊急配備までして『間違いだった』じゃ済まないんだよ! 俺達警察は権力を持っているからこそ慎重に捜査しなければならない。そのための規則でそのための捜査手続きだ。奥多摩の交番から来た素人が、野生の勘だけでしゃしゃってんじゃねえよ! 俺までマウント取っちゃったじゃないか! もうっ!」 伊吹「何だかテンション上がってきたー!!ねえっ?!」 志摩「今の状況で緊急配備は無理」 伊吹「じゃあどうする?」 志摩「やるなら、ルール内でやる」

 

「規則」に則って行動する志摩。だから、ナウチューバーのRECがゆたかとハムちゃんを盗撮していたカメラをチェックすることなく、返した。公の権力の大きさを知っているからこそ、必要以上に警察の権力は使わない。桔梗部長も同じ。

 

桔梗は、ハムちゃんがスマホでやり取りをしている相手との会話が気になって、テーブルに置かれたスマホを一瞬見ようと心動くが、やめる。警察官よりも人間としての品性や気持ちを大事にしている桔梗だからこその行動。

 

なんだけれど、志摩がチェックしなかったこと、桔梗がスマホを見なかったこと、この二つが事態を未然に防げなかった理由でもあることが辛い。

 

彼らが真っ当で、優しくて、自分に厳しくて、みんなのことを考える人たちだからこそ、その選択は間違っていないのに、いないから辛い。

 

羽野麦がメロンパン号に乗っているときに、伊吹に言った言葉が印象的。

 

羽野「ぜ~んぶ表ならいいのにね」 伊吹「表?」 羽野「表の世界だけ。悪い人が掴まって、頑張ったら報われて、正しいことした人が後悔しないで済む世界」

祈りのようなそのセリフ。それが現実ではないことの悲しさ。

 

10話予告で流れる

桔梗「手段を選ばない人間とどう戦えばいいんだろう」

という究極の問いにぶち当たるんだろう。自分たちは警察で、違法なことは許されてなくて、そのなかで犯人を捕まえるという使命を負っているひとたち。

 

このドラマは、理不尽なことをされて「あっち側」にいってしまったガマさんや加々見を描きながら、そうせずに踏ん張る人たちも描いているんだと思う。

 

そういう人たちへの応援。7話で陣馬が家族を顧みずに仕事ひとすじで来たことをどう捉えればいいかがわからない、と私が書いたところ、そういう人々への応援ではないか、とコメントをくださった方がいらして、今本当にそのとおりだと思うばかりです。

間に合う間に合う!!!!

金曜日、ドラマが始まる前にこんなツイートしてたんです。

4話「ミリオンダラー・ガール」で、青池を助けられなかった桔梗隊長の、叫びが忘れられないんですよね。

 

桔梗 『恨み言みたいだったね、警察への。 「最後にひとつだけ」、「わたしが助ける」、 「自由になれる」「そんなの嘘だ」 「逃げられない、何もできない」 「弱くてちっぽけな小さな女の子」 「誰が決めたの」「つまらない人生」 「もう死ぬみたい」 彼女が最後に見た景色は、絶望だった。 私たちはいっつも間に合わない

 

このドラマの鬼のようなところはですね。ハムちゃんは間に合った。成川も間に合った。ああ、良かった… ってホッとした後に、エトリが間に合わなかったことなんですよ…

 

顔もわからず本名も知りえない、エトリという名前だけの人物が、みんな黒幕だと信じて疑わなかった人が、一瞬で消える。

 

今までもこれからも、幸運が重なって間に合うこともあるけれども、決して間に合わない事だってあるんだってすぐに突きつけてくる…

 

このドラマは、警察MIU側も、あっち側へいってしまって犯罪を犯してしまった人たちも、「居場所のない人たち」なんだと思う。理不尽に理不尽で返してしまった人の思いを丁寧に汲み、それを追いかけるMIUの面々の思いも汲み、そして最後に何を見せてくれるんだろう。

 

最終回まであと2話。

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あじさい