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MIU404<8話ネタバレあり>「大いなる絶望とほんの少しの希望と」

8話、かなりかなりきつかった…

あらすじはこちら。「君の笑顔」

https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/story/vol8.html

 

メインとサブ同時進行のストーリー

404機捜メインのお話が7話まで描かれてきた脇で、縦軸だった志摩の過去が6話「リフレイン」で明らかになり、3話「分岐点」で逃げおおせた高校生・成川(鈴鹿央士)が7話「現在地」最後で少し出てきた。

 

あとはこの成川と久住(菅田将暉)、そして黒幕エトリとハムちゃん(黒川智花)(このふたつの線が結びつくのかどうかも含め)の顛末を待つだけかと思っていたら…

 

8話でこういう話が来るとは… 絶句。伊吹の恩師である蒲郡小日向文世)との関係の話は、俳優に小日向さんをもってくる感じからして何かしらあるとは思っていたけれども…

 

ガマさん(蒲郡)が初めて出てきたのは、5話「夢の島、伊吹と居酒屋で飲んで志摩の話なんかをしていた。

 

今回の8話を見終えたとき、じゃあ、この5話はいつの話なのか?ガマさんが復讐殺人を犯した前?あと?

 

ドラマ終了後、Twitterでタグを追っていたら、蒲郡の妻がひき逃げされ亡くなった日と、伊吹が4機捜に配属された日が同じ4月5日だ、というものが。

 

画面に映りこんだ捜査報告書に日付が記載されていたもののスクショだからその通りなんだと思います。(Twitterにて #MIU404 タグで検索してみてください)

 

という事は、1話と同時に、ガマさん(蒲郡)と奥さんが、今回の被害男性・堀口(ガマさんが初犯時に担当)にひき逃げされていたってこと。

 

メインとは別で、ガマさんのサブストーリーも同時に始まっていたとは…

 

5回「夢の島の回で伊吹と差しで飲んでいたガマさんはもう既に妻を亡くしていたってこと。ただ、ドラマ内の情報だけでは、その時に殺人を犯してしまった後なのかどうか、はわからない… 堀口(ひき逃げ犯)は死後1か月、とあったから、もうやっぱり殺してしまった後なのか…

 

ここの部分、Twitterでコメントを頂いて、間違っていたので訂正します。

 

5話、GOTO KONBINIが決行されたのが6月9日の3:33。その流れだと居酒屋に行ったのは6月ということになります。一方、堀口の遺体が見つかったのは9月ころ(8話から)。死後1か月とあったので、殺人が決行されたのはたぶん8月頃。

 

ということは、5話の居酒屋の場面では、まだガマさんは復讐しようと考えてはいただろうけれども、殺人は犯してないことになると思います。

 

いずれにしても、メインのストーリーとは別に、ガマさんの奥さんは理不尽に殺されてしまっていた。刑事時代に取調べたその男がガマさんに相談を持ち掛けてきたのを断ったという理由で、逆恨みで殺されたも同然… 1話「激突」と同じタイミングでガマさんの復讐計画がひっそりと始まっていたんだ…

1話を見なおしたら…

8話を見てから1話を再生してみると、伊吹のセリフに意味深なものが多くあるんです…

伊吹「もう志摩ちゃん遅いよ~こいつ撃っちゃってもいいよね」 志摩「銃を捨てろ。相手は降伏してる」 伊吹「轢かれた、殺されかけた、正当防衛だよ」 志摩「発砲の要件に適ってない」 伊吹「規則なんてどう~でもよくない?誰も見てない。防犯カメラもない。ここにいるのは俺と志摩ちゃんとこのくそ野郎だけ」 男「許してください」 伊吹「お前みたいなやつが生きてるとみんな不幸になるんだわ。許せるはずねえだろうがよ。はい、死んだらおわり。死人に口なしだ。バイバイ」 志摩「やめろ!!!!!!」 (伊吹はおもちゃのスティックを取り出す)

1.「轢かれた、殺されかけた、正当防衛だよ

ガマさんの奥さんは、事実「轢かれて殺された」わけで、このセリフにガマさんの行為が重なって見える。

 

2.「規則なんてどう~でもよくない?誰も見てない。防犯カメラもない。ここにいるのは俺と志摩ちゃんとこのくそ野郎だけ」

ガマさんが犯行時に思っていた事かも…

 

3.「お前みたいなやつが生きてるとみんな不幸になるんだわ。許せるはずねえだろうがよ。はい、死んだらおわり。死人に口なしだ。」

ここもそう。ガマさん…

 

1話には他にも、今見るとハッとするセリフが。

伊吹(逮捕された男に向かって)「良かったな、誰かを殺す前に捕まって」

 

伊吹「機捜っていいな。誰かの最悪の事態になる前に止められる。超いい仕事じゃ~ん、なっ」

 

これ。8話のガマさんのスイッチになれなかった伊吹がこんな風に話していたことがわかって二重にも三重にも苦しくなってきました。

 

実は、2話3話と話を重ねるごとに面白くなってる感じがしてました。(私の中では1話はそんなでもなかった)

 

でも、こうやって改めて戻ってみると、キャラを立たせる設定、事件、アイテム、全てがここから始まったんだ…!!!!っていう感動を覚えます。

 

ひとつのドラマの中に入っている主人公2人のストーリー、そしてそれぞれの脇役のサブストーリー、登場人物全員の人生がひとつひとつ立体的にたちあがり、その多層性に息をのむばかりです。

 

アンナチュラルと同じ世界

アンナチュラルというドラマがありましてね… なんていう前置きは要らないですね、はい。

 

野木氏脚本のアンナチュラルと同じ世界にMIU404が存在している。

 

3話で刑事の毛利と向島で出てきたり、その後も、香坂の司法解剖文書に三澄ミコトの名前があったりして、アンナチュファンとしてはそのクロスオーバーが嬉しかったり、余りにアンナチュを使いすぎるのは逆に興ざめだなぁとも思ったり。

 

めんどくさくてすみません。

 

で、8話に、中堂の相棒ともいうべき?ムーミン坂本が出演することが予告でわかり、またクロスオーバーかぁ。とちょっとお腹いっぱいかなって一週間過ごしていたのですが…

 

なんと8話の連続猟奇事件の謎を「連続殺人オタク」と呼ばれながら、中堂がその矛盾を暴く、という作りになってました。

 

8話の肝は、その連続殺人に見せようと偽装していたガマさんの犯行が明るみになることで、「理不尽な仕打ち」には理不尽で返すしかないのか、と簡単に答えが出ない問いをこちらにぶつけてきて… そしてそれを暴いたのが、婚約者を理不尽に殺された中堂だったていうのが… もうね…

 

中堂が過去のせいで行きそうになった「あっち側」(アンナチュラル5話の鈴木(泉澤祐希)や、MIU2話の加々見とか)に行かずに済んだこと、ガマさんは既に「あっち側」に行ってしまっていたこと、これを対比させて「理不尽を理不尽で返すことの是非」をこちらに考えさせる構造がまずすごい。

 

これはアンナチュラルを知ってるひとだけが気づくおまけみたいなものなんだけど、あの中堂の葛藤を知っているからこそ。

 

ガマさんには、躊躇いがない。伊吹の存在ですらもその行動を止めるスイッチにはなり得なかった。

 

1話から見ている伊吹の底抜けの馬鹿さ加減、志摩にマウント取られても、「なんだかテンション上がってきた~!!!!」と叫ぶところ。

 

志摩の元相棒香坂の死の真相を見つけてきた後に、「俺の生命線は長い!」とドヤ顔で言うところ。

 

志摩が宅配メロンパンを頼んだと聞いて「志摩ちゅわん♪」とワンコ顔になるところ。

 

そんなシーンが思い出されるからこその絶望感。

 

伊吹にどれだけ感情移入してたんだろう、と気づかされた8話。馬鹿で走る事だけが得意な野生の異端児。だからこそ私は伊吹が過去救われたというガマさんを、信頼してくれたガマさんが居てくれたからこその伊吹の現在地を、感謝とともに見てた。

 

過去に囚われていた志摩が少しだけ光の方へ向いていけるようになった。そして伊吹はガマさんからもらえてた光が消え暗闇に…?

 

ラストで、志摩が伊吹に手を差し伸べ、自分から伊吹の手を掴んだところ、ああ、良かった。志摩がいた。そうだ。志摩がいた。

 

大いなる絶望と、ほんの少しの希望。

 

理不尽な目に合うことは決して特別なことじゃない。3話の高校生たちだって、自分じゃなく先輩がしてしまった疑惑のせいで活動したかった陸上部を廃部にされた。そういう身近に起こり得ること、交通事故だって、無差別殺人だって、そこに居合わせただけで否応なく巻き込まれてしまう。

 

巻き込まれてしまったら、どう生きるのか。答えのない問いだからこそ、それぞれ視聴者の感情の奥の奥に入り込んでくるドラマだからこそ、重くて辛い。

 

志摩の葛藤は過去から引きずってきたものに対し、伊吹の葛藤を私たちの目の前で現在進行形で見せ、この先続いていく。

 

伊吹の喪失は私たちの喪失であり、この先見せてほしい再生は私たちの再生でもあるんだと思う。そう思わせる。

 

そして、どんなに理不尽な目に遭っても、ダメなことはダメなんだ、と。ガマさんのストーリーをこういう形にしながらも、志摩と伊吹はこのスタンスを貫いていくんだと思う。

志摩「加々見さん、あなたは人を殺した。理由はどうあれ、命は取り返しがつかないんだよ」 伊吹「お前!!!!殺しちゃだめなんだよ!!な!!!相手がどんなにクズでも、どんなにムカついても、殺した方が負けだ。な… 無実でいてほしかったな…」 2話「切なる願い」

 

志摩「あなたは人を殺しちゃいけなかった。全警察官と伊吹のために」 8話

 

他人も自分も信じない志摩と、信じすぎる伊吹。二人が出会って、少しだけ信じられるようになった志摩と、信じていた人を信じたかったのに打ちのめされた伊吹が、これから最後に向けて見せる相棒のカタチ、楽しみでなりません。

 

細部にわたる多層性と過去ドラマを用いながらクロスオーバー以上に話に食い込ませる綿密さに心揺さぶられながら最後までおいてかれないように追っかけていきたい。です。

 

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あじさい