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MIU404 <6話ネタバレあり>「誰かを救うことはできるか」

”伊吹は相棒を救えるか” 6話「リフレイン」

あらすじはこちら。

https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/story/vol6.html

 

志摩(星野源)は、相棒殺し」という噂話を聞いた伊吹(綾野剛)は、志摩から真相を聞き出そうとする。しかし、志摩は一向に話そうとしない。堪り兼ねた伊吹は、九重(岡田健史)から志摩のかつての相棒である香坂(村上虹郎)が不審な死を遂げていた事を聞き出す。 伊吹は九重を引き連れ、香坂の死の真相、そして、同日に起きた連続毒殺事件について調べ始めるが…

 

横川氏のこのレビューがとても読み応えあるので貼っておきます。横川氏を知ったのは、おっさんずラブに関して書かれた記事を読んでからで、ドラマへの熱量がすごい方です。

https://plus.paravi.jp/entertainment/006979.html

いろんな「リフレイン」の意味をもって志摩の過去にライトを当てた6話。

ひとはひとを救えるか

公式にあった

”伊吹は相棒を救えるのか?” という問い。

 

結論から言うと、ひとがひとを完全に救うっていうのは難しい。というのが私の考えです。

 

今回、志摩の心に澱んでいる滓(おり)のような暗い過去が明らかに。かつての相棒・香坂が踏み込んではならない閾値に踏み込んでしまった時、悔いる香坂に言葉をかけなかったこと、会いにいかなかったこと、「スイッチ」を押す機会が何度もあったのに、それを見送りにした。これは厳然たる事実…

 

もちろん香坂が自殺ではなく、最後まで警察官としての職務を忘れなかったんだろう事実を伊吹が見つけてくれ、失意のまま死んだのではなかったことで、志摩の気持ちに少しだけ光が入ったのは確かだと思う。

 

でも。2話で、志摩が激高して言っていたセリフがここに繋がっていて

志摩「人は信じたいものを信じるんだよ!伊吹も田辺さんたちも加々見がやってないと信じたかった。『俺はやってない』犯人はそう言うとき多くはごまかすためにだ。捕まりたくないから。だけどもう一つ。犯人自身がやっていない、と思いたい。自分のやってしまったことを認めたくないんです。できることなら罪を犯す前に戻りたい。なかったことにしたい。でも時は戻らない!!!!」

 

これは志摩自身の心からの叫びだったんだろうと。

 

志摩は

 

「香坂の待つ屋上へ行って、香坂に言葉をかけ、手を伸ばした」

 

と思いたかった。

 

でも、時は戻らない。そう思い込みたかった志摩が何度も何度もリフレインして夢にみる香坂との最後がせめてこんなものであったならばという祈りのようなものが哀しい…

 

2話で、被疑者の加々見を信じると言ったのは伊吹でしたが、本当は、いちばん加々見が犯人でなければいいと、そうであってほしいと願ったのは志摩だったかもしれない…と考えて震えました。人も自分も信じないと言っている彼自身が、いちばんひとを信じたいのではないか、と。

 

完全にひとを救うことはできない。

 

香坂の最後の時間がどんなものだったか、伊吹のおかげで分かった後、香坂が死んでいた場所に来て座って語り掛けるように…

 

志摩「ずっと来られなくてごめん。 お前のことずっと弱いやつだと思ってた。刑事に向いてない。弱いやつだって。だけど俺はあれからウイスキーが飲めない。俺もたいがい弱かった。今機捜でホシを追ってる。彼らにえらっそうに言葉をかける。そのたびにすっげーブーメラン。俺にそんなこと言う資格があるのか?俺こそは裁かれるべきなんじゃないか。お前の相棒が伊吹みたいなやつだったら… 生きて、刑事じゃなくても生きて… やり直せたのになぁ… 忘れない、絶対に忘れない」

 

伊吹のような人が香坂に出会っていたならば。違う結果になっていたのかもしれないという情けなさと自己否定と悔悟。

 

それでも。志摩を相棒として真正面から向き合いたい伊吹がいたからこそ。

伊吹「俺が4機捜に来たのがスイッチだとして」 桔梗「スイッチ?」 伊吹「ほら、俺が4機捜に呼ばれたのって急遽誰かが4機捜に入ったから、志摩と組むやつが足りなくなってこう、俺が呼ばれたんでしょ。玉突きされて入った俺が、404で志摩と組むことになってふたりで犯人追っかけてそのいっこいっこいっこ全部がスイッチで。なんだか人生じゃん。いっこいっこ、大事にしてぇの。諦めたくねぇの。志摩と全力で走るのに、必要なんすよ。」

 

伊吹が志摩にぶつかっていって、癒えてない傷どころかその傷にすら志摩自身も触れられなかったのに、伊吹のおかげで傷に向き合えた。香坂に向き合えた。自分が抱えてきた後悔と誰にも言えなかった「死ぬ前に香坂に言葉もかけなかったし会いにも行かなかった」ことを吐き出せた。

 

全てを救えないとしても。救われなかったとしても。暗くて救いのない過去の亡霊のように生きてきた志摩の体に血を戻し光をもたらしたのは伊吹だった。

「あけっぴろげによぅ」陣馬の言葉

志摩の元相棒・香坂の真実を知った九重が陣馬(橋本じゅん)と歩きながら。

九重「俺が香坂刑事だったら、志摩さんに言えたかなぁ… 自分が使えないやつだって、認めるのは怖いですよ」 陣馬(九重の袖を強く引っ張って)「間違いも失敗も言えるようになれ!ばーんってあけっぴろげによぅ。最初から裸だったらなんっだってできるよ…!」

いやぁ、泣きました。

 

自分の過去をがっつり思い出しました。40超えて教師になって、自分をよく見せたくてしょうがなくて、失敗も間違いも誰にも言えずに自分で自分を追い込んでいって、そうして辞めざるを得なくなりました。

 

自分に陣馬のような人が周りにいてくれたなら。自分ですべてを背負わずに誰かに弱音を吐けたのになぁと。誰かのせいにしたいわけではないけれども。

 

誰と出会うか出会わないか。刺さるなぁ…

 

志摩「その通り。自分の道は自分で決めるべきだ。俺もそう思う。だけど、人によって障害物の数は違う。正しい道に戻れる人もいれば、取り返しがつかなくなる人もいる。誰と出会うか、出会わないか。この人の行く先を変えるスイッチは何か。その時が来るまで誰もわからない。」 3話「分岐点」

 

九重はたぶん3話で失敗をしている。それがどうなっていくのか… 九重が陣馬はじめ4機捜のメンバーと出会えたことはきっとひとつの僥倖になると信じて…

 

このドラマは、一話完結ではあるけれど、一話一話にちりばめられた伏線がそこここにあって、たまらないですねぇ。ドラマファンとしてその繋がりを見つけるのも一つの楽しみになってます。

 

志摩はウイスキーを飲める日が来るのかな。来たらいいな。伊吹と一緒に、4機捜のメンバーと一緒に、飲める日がそのうち来るといいな。

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あじさい