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MIU404<10話ネタバレあり>「覗いている私たちが覗かれた」

10話「Not Found」

あらすじ

https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/story/vol10.html

正義と分岐点

1話から、折に触れて「正義」という言葉が使われていた今作。志摩は、1話の時点ではこんなことを言っていたけれど…

伊吹「やりがいは? 機捜のやりがい」 志摩「これが仕事、職務」 伊吹「そんなんじゃやれねえだろう。警察って命がけっしょ、なのに給料高くない、捜査一課なんていったら四六時中捜査に明け暮れて家にも帰れない、それでも何でやるのかっていったら、正義感。犯人を捕まえたい、それしかないっしょ。なのに機捜はその前で終わる。もう~張り合いないっ!」 志摩「だからそういう仕事。当番勤務は24時間、24時間の間にできうる限りを尽くして、検挙率を上げるためのパーツとして働く。自分の満足のためじゃない」 伊吹「パーツ?」 志摩「あと一つだけ言わせてもらう」 伊吹「まだ言うの?」 志摩「俺は自分のことを正義だと思ってるやつが、一番嫌いだ

 

このセリフは、後から6話で解明される、元相棒の香坂のことなんじゃないか、と6話を見た後思ったんだけど、もしかしたら、自分も過去香坂みたいに正義を傘にきて暴走したのかな…

 

志摩「お前が注文したのか?」 香坂「まさか。」 志摩「なりすますことは可能だ」 香坂「もし仮に、そうだとして、それが何です?」 志摩「はっ!?」 香坂「大きな正義の前に、そんなさまつなこと」 志摩「本気で言ってるのか?今まで何を習ってきた? 警察は、法律が定める手続きによってのみ個人の自由を制限できる。法を守らずに力をふるったらそれは権力の暴走だ。俺達警察は・・・。」

ひたすら規則と手続きに則ったやり方で犯人を見つけ逮捕するという前提を守り続ける志摩。いちばん正義に真正直でありたい人なんだろうと…  そして、その正義は「規則ルール手続き」を抑えに使うことで暴走しないよう自制しているように見える。

 

でも、久住が犯行を重ねていくのを見ていて、その気持ちが揺らいでいるような苦しい気持ちが見えてくる…

桔梗「手段を選ばない相手と、どう闘えばいいんだろう」 志摩「俺たち警察は、弱いものを守りながら、どこまでも正しく、清廉潔白でいなくちゃならない…」(苦笑しながら)

 

1話から、志摩と伊吹の関係の変化を見てきた私たちは、彼らの目指すところ、正義への考えのカタチが重なってきたのを知っている。1話で犯人を捕まえたときに、もう殺しちゃっていいよねって冗談とも本気とも取れない事を言っていた伊吹が今回。

ゆたか「悪いやつはぶっころしちゃえばいいよ!」 伊吹「ぶっころす、なんてどこで覚えたんだよ!ん?ま!俺も昔はそう思ってた。はっ。だけどな。法律ってルールがあって、俺たちはそれを守んなきゃいけない」 ゆたか「悪いやつはルールを守んないんでしょ。ずるだよ!」 伊吹「それでも、ルールは守んなきゃいけないっていつも志摩が言ってる。じゃないと、正義のはずが不正義になるんだって」 ゆたか「不正義?」 伊吹「ただしくないってこと… うあ!あ?うお!!は!いやぁ、正義ってすっげぇ弱いものなのかもしんないなぁ」 ゆたか「弱くちゃだめじゃん」 伊吹「おーいてぇとこつくなぁ。弱いから大切にして、みんなで応援しないと。消えてなくなっちまうのかもしんないな?

 

だから、10話ラストで、文字通り「分岐点」が彼らの目の前にあり、右に行けば久住、左に行けば爆破を受けた病院、の選択肢を志摩が伊吹に預け、久住を捕まえることよりも、病院にいる人たちを助けることを優先したのが、ほんとにほんとにこの選択が「弱いものを守り、正しい」判断であり、間違ってないからこそ、爆発がフェイクだったと後から知るエグさが際立つ…

 

このドラマはいろんな「分岐点」を見せてきたけれど、10話でもこの久住か病院かを選ばないといけないところ、志摩が桔梗の家から朝出てきて、右に行くか左に行くかをちょっと悩むところ、久住がラスト、捕まらないよう右に行くか左に行くか決めるところ、など、その時々の選択肢を「選ぶ」行動を私たちに見せている。

 

きっと、最終話でも、このような場面が出てくるのかもと予想してしまう。それが「正義」に絡めたものになるんじゃないか。1話で、伊吹が犯人への怒りから拳銃で撃ってやろうかと思ったという話が伏線になっている気がしてしょうがなく。

 

1話では、その話を聞いた志摩が、

「現実の刑事は9割が引退まで拳銃を抜かない。「撃たない」じゃない、抜かないんだ。それが日本の警察」

こんなことを言っていた志摩が… っていうような展開になる気がして気がして。

 

九重と久住

九重は成川を逃がしたけれど、そこから周りに助けられ自分でも努力し、大きく成長しましたよねぇ。

 

彼がキャリアだっていうこと、父親の警察庁刑事局長が自分がやってみたかったと息子を機捜に入れたっていうこと(これは父親が言ってるだけでほんとかわからないけど)ここまで大きく物語に関わってくるとは思わなかった。陣馬さんが九重を機捜から外す理由を説明する姿が、ほんと愛、って感じで。

陣馬「警察庁で上っていくためにはな、お前は俺らみたいな兵隊とは違うんだ」 九重「陣馬さんまでそんなこと言うんすか」 陣馬「悪くとるなよ。その分、お前は俺らと違うことができる。それがいずれ俺たち兵隊を助けるんだ」 九重「俺ってうんざりするほど恵まれてますよね…」

 

「アンナチュラル」の六郎(窪田正孝)の父親(医師)に比べれば、九重の父親は良識あるタイプだし、四機捜のメンバーは彼の立場を理解した上で成長させようとしている。特に401の相棒の陣馬と一緒に過ごした日々を含めて「恵まれてる」と自分でもわかっているんだと思う。

 

それに比べて久住。

 

九重と同じような年齢。自分の過去についての言及を相手によって次々と変え、共感を持たせてから利用できるかどうかを見極める。久住を名乗ったり、五味と名乗ったり、どこに彼の真実があるのか誰もわかっていない。

 

9話の最後まで私たちが黒幕だと信じて疑わなかった「エトリ」は久住の手先で、「エトリ」が逮捕されたと知って簡単にバンしてしまった…

 

九重と久住。両方とも大分県にある地名。両方ともその地名は「くじゅう」と読む。登場人物の名前に拘りがあるように見える野木氏が、このふたりを対比させてるように思えてならないのは私の気のせいか。

 

生まれも育ちも恵まれてて、赴任した機捜でも良識ある大人たちに囲まれて成長していく九重。

 

かたや、どこの時点でそうなってしまったか、

「そやったら俺は人間やないんかなぁ、人間やないもんを裁くのは無理やな」 「だから言うてるやん。人間やないんやから。人間がどうなろうとどうでもええねん」

どこかもうこの世を捨ててる感じ。何かの復讐をしたいのか。過去の経験や憎しみがそうさせてるのか。或いはサイコパスなのか。まったくもってわからない。

 

九重とはすべてが違う人間。彼のどこが分岐だったのか。それを最終話で明らかにされるのか。

深淵を覗くとき

久住がRECのパソコンを乗っ取って、自分のドーナツEP工場周辺の検問をかく乱すべく起こしたフェイク爆発。

 

フェイク動画だろうがなんだろうが、それを見た人々が次々リツイートして拡散されていく様子の既視感。

 

過去のRECの動画も巧みに使って、まるごとメロンパン号を犯人に仕立てていく流れには口をあんぐりして見てるしかなかった…

 

自分たちがこのドラマを見てリアルタイムで #MIU404 タグで呟くさまが、まさにドラマ内で行われていく。まるで鏡に映った自分たちを見させられてる感覚。

“Beware that, when fighting monsters, you yourself do not become a monster… for when you gaze long into the abyss. The abyss gazes also into you.” 怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。 フリードリヒ・ニーチェ(1844年~1900年)『善悪の彼岸』146節

 

作り物の筈のドラマなのに、あちらからも覗かれている感じ、このインターネットミームにもなっている「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている」を思い出してしまった。

 

RECは特別な誰かじゃない。今、実際ドラマを見て、SNSで実況をしているあなたたちだってRECと変わらないんじゃないの?事の真偽を確認せずにどんどん拡散ボタンを押す世の中の人々のうちの一人じゃないの?って言われたみたいで…

 

自分は「正義」。自分だけは悪いことはやってない。信じたいものを信じる。そんなバイアスがかかっている私たちに向けたメッセージなんだろうと思います。

 

Not Found

爆発はフェイクで存在しなかった。

 

1話で、糸巻から新四機捜のホームページがアクセス集中で404エラーになっていると報告を受けた桔梗が、それをマスコミに説明。しかし本来アクセス集中で出るエラーは503だった。

 

このエラーの話がここで生きてくるとはね… 糸巻って信頼できるのかな。って思ってしまう。わざと?桔梗がこういう説明をしたことで、マスコミやネット書込みで嘘つき呼ばわりされてしまうんだもんなあ。

 

伊吹と志摩が、浜田(久住)と会議通話を使って会話しているところ、後ろで聞こえてくる話し声から「カレーうどんの汁こぼして出前太郎が謝っている」のを発見。

 

久住がネットに詳しくて理詰めでぐいぐいねじ伏せていく感じに対抗できるのは、同じく科学的に論理で考えてく志摩じゃなく、本能とか勘で生きてる伊吹なんじゃないかなって。

 

加えて、この久住が使ってたシェアオフィスの名前、UFO(未確認飛行物体)でしたね… どこまでもNot Found。

 

不在という事で言えば、フェイク爆発の時の捜査に居なかった九ちゃん。4話や5話でネット使いとしての力を発揮してみせていた九重がそこにいれば、もっと早く気づけた…のかも…?

 

本当の名前がわからないまま死んでしまった「エトリ」。「久住」「五味」「浜田」と名前を変え顔も見せないヤツ。

 

存在を表に現わさない彼らを引きずり出して罪を償わせる、その方法を早く見たい。

 

最終話へ向けて

陣馬さん!!!!生きていて!!!!どうか、ほんとにお願いします!!!

 

「弱い正義」を、機捜を含め、多くの心あるひとたちが助け合って、応援して、消えてなくならないよう、希望が見えるラストをぜひ!期待しています。

 

久住をどう裁くのか?志摩伊吹と同じ土俵にすら居ない久住が、自ら「参った」と負けを認める場面は見れるのかな。

 

志摩が久住の正体を「メフィストフェレス」と呼び、それを聞いた伊吹が「むじーよ。メケメケフェレット?」と存在しない物体に空耳。その聞きなれない名前で呼ばれた久住がすぐさまそれを検索したこと、それが何かしら関係してくるのかな…?

 

続編や映画化というような手段は取らないと思っているので、あと1回でどこまで伏線を回収してくれるのか、ほんと楽しみに待っていようと思います。

 

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