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直親の娘がもたらしたもの ~20回 おんな城主直虎~

直親株大下落回だったわけですが、こういうワイドショー的下世話な話と、周りの大国とを絡めた見応えのある回でした。

あらすじ

 亡き直親三浦春馬)の娘と名乗って井伊谷にやってきた少女・高瀬(髙橋ひかる)。元許婚である直親の隠し子発覚にショックを隠しきれない直虎柴咲コウ)だが、井伊家の当主として、その真偽がわかるまで高瀬を屋敷で預かることを決める。噂を聞きつけた直親の元妻・しの貫地谷しほり)は高瀬のもとに乗り込むが、その対応は意外なものだった。一方政次高橋一生)は、今川と武田の同盟関係に亀裂が入ったことから、高瀬は武田が井伊に送り込んだスパイなのではないかと疑う。しかし、かつて直親が笛で吹いていた曲を高瀬が鼻歌で歌っていることを知った直虎は、高瀬を井伊の姫として迎えることを決める。そんななか常慶和田正人)が井伊を訪れ、今川を切った武田の動き、それを操る織田の目論見を報告する。直虎が当主となった年が明け、新年を迎えた井伊家では綿布の見本が出来上がる。直虎はそれを商うため、方久ムロツヨシ)の勧めに従って気賀の街を訪れる。 第20回「第三の女」|あらすじ|NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』

 

今週の雑感

相変わらず、方久の顔芸が細かくて笑えるし、動作がLIFEそのまんま。今回は之の字と六左の出番が少なくてちょっと残念だったけれど、六左のお祝いの席での踊りはとても良かった。なんか癒やし。六左はほんと毎回癒やし要員です、感謝…

 

昊天さん(おかん)と傑山さん(アニ)のナイスフォローも泣けた。幼い頃からずっとお寺で一緒に過ごした家族のような二人だもの。直親に隠し子がいたと聞いて、もう直虎を一生懸命励まし慰める。直虎の辛いことも悲しいことも側で見てきたこの二人が見守ってくれるって、ほんと心強いなぁ…

 

祐椿尼さま(直虎の母)も直虎を気遣ってました… 気遣いながらも高瀬への優しい言葉掛け。早くに娘を娘として育てられなかった、母親の視線で高瀬を見ている眼差しがとても暖かで和みました。

 

世が世ならば、直虎は直虎になる必要はなく、美しく長い黒髪をそなえ、辻が花を着て、自分と心静かな時間を過ごしたりできただろうに…という思いが伝わってくるようでした。

 

高瀬がもたらした波紋

さて。

 

今回の重要人物は直親の娘(だと今のところ思われている)高瀬でした。彼女は井伊にて重要な役割を果たしました。

 

ひとつは、直親をめぐる恋敵というかライバルのしの殿との雪解け。

 

直親と直虎の関係に劣等感があり過ぎて、虎松の母ということで己の自尊心を辛うじて保っているしのは直虎に対して心を閉ざしていました。

 

それが。直親の隠し子が現れたことで変わっていきます。そのようなことなど、微塵も気にしてはいないと言い張る直虎に対しての、しのの言葉が直虎の本心を吐露させます。

 

しの「おさびしかったのだと思いますよ。直虎様を忘れておられたわけでは…」 直虎「しの殿、この前も言うたが、我はさようなこと微塵も気にしてはお…」 しの「そうでなければ、お二人の絆に心悩ませてきたわたくしも浮かばれませぬ…」

 

ここから直虎の直親への恨みやつらみが爆発します。しの殿、ナイス。直虎は、領主らしく振る舞わなければという思いと自分のプライドとで家臣には言いたいことを言えずにいたんでしょう。その固く閉じた心を解いた瞬間。ひとは、自分に刺さる言葉掛けをされれば、自ら頑なな心を開けたくなる時が来るのだと痛感しました。

 

また、直虎にそういう言葉をしのが言えたのも、自分だけが可哀想だと内に内に向かっていた心のベクトルが、隠し子がいたことで外へと向けられたわけで、虎松(井伊を継ぐもの)の生母と後見がそれぞれの弱みを見せあって近づけたことは、井伊を存続させていくうえでとても大きい前進だったのだと思います。

 

そういう意味でこの高瀬が為した事はとても重要なんですが、ここにもうひとつ、彼女の役割があります。

 

それは、「間者かもしれない存在」であるということです。

 

この疑惑は、小野政次の出した考えでした。あんな小さいこどもが…と家臣たちがバカにしたように反応するのに対し、政次は呆れ顔で周りの大国たちが今どのような動きをしているのかを皮肉たっぷりに言うのですが、井伊という小さくて視野の狭い場所のせいで、目の前の小さなことには関心があっても、大きな動きには鈍感であるという、これまで井伊が犯してきた過ちそのものの土壌を見せます。

 

駿府や甲斐、三河、美濃など、この時代の大国が勢力争いを抑えるために姻戚関係を結ぶことでそのバランスを取り、仲良くはせずとも戦わないという選択をしていたことを知りつつも、そのことを肌身に感じられ、情報を得られるのは、駿府に出入りしている政次のみという、井伊の弁慶の泣き所を、高瀬という隠し子が来たことで更に顕にさせています。

 

私はこの後の史実をあまり知りたくないという気持ちがあってあまり知識がないのですが、この先の今川の滅亡、織田の隆盛を見ることになる上で、小国がいかに生き延びるかという智慧を生み出さねばならない、そんなギリギリの綱渡りを迫られる。周りの大国たちの怖さをひしひしと感じました。

 

高瀬が間者かもしれない、という政次の考えは、彼の直虎を思う優しさと同時に、やはり武田が今川と手を切ろうとするこの時期に井伊がどのような動きをしようとしているかを知りたい武田の思惑である可能性も多々あり。先週の盗賊のような井伊家の中での小さい動きと共に、周りの国々を恐れなきゃだめじゃないの?!と私達視聴者に訴えかける格好の存在であったと思うのです。

 

実際、誰も父である直親にこどもがいたという事実を知らないと聞いたとき、高瀬はすぐにここから出ていくと退きます。その言動が自分に対する憐れみを得るだろうとの計算が働いているような感じを受けたし、ラストで常慶が姿を現した時に謎めいた視線を送ったのも映されました。果たして彼女は間者なのかどうなのか、はまだ結論は出ていないんですよね。

 

直虎にとって美しい思い出の直親を葬り去り、直親の為ではなくて自分の意志でこの家を守っていく覚悟をさせ、併せて周りの国の危うい状況をもひしひしと感じさせる高瀬の登場。これは、このドラマの重層性、複雑さを見せつけ、面白さに拍車をかけているように思います。彼女が井伊にどのようなものをもたらすのか、まだわかりません。

 

さて次回は、ようやくあの旅の男の正体を知るようで… この男も相当これからの直虎に影響を与える人物のようで楽しみにしています。

 

それから、直虎と政次のふたりのあれこれ。たくさんありましたねぇ。また次回書きます。

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お越し頂きありがとうございました。

あじさい