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集大成、そして許されたい男 ~27回 おんな城主直虎~

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とうとう直虎が城主に。ここまできました…

 あらすじ

中村屋本田博太郎)と気賀の町衆は井伊谷を訪れ、気賀の城には大沢氏嶋田久作)ではなく、直虎柴咲コウ)に入って治めて欲しいと願い出る。瀬戸方久ムロツヨシ)は井伊が気賀の港を押さえることでさらに商いの手を広げられると意気込み、まずは今川重臣の関口氏経矢島健一)を懐柔しようと動く。そんな折、今川氏真尾上松也)のもとに火急の知らせが飛び込む。武田・今川の同盟の要である武田義信が自害したというのだ。一方、中村屋から井伊が気賀の城を治めるかもしれないと聞いた龍雲丸柳楽優弥)は、城の普請を請け負うと言い出す。万一攻め込まれた際に、船で湖に逃げ出せる城を作ろうというのだ。直虎を城の普請場に案内した龍雲丸は、自らの過去を語り始める。そして、大沢がいくつもの城の普請を抱えていることを教える。大沢が負担を感じているのではと考えた直虎は、方久を通じて大沢を説得。大沢は自らの代わりに井伊が気賀の城に入れるよう氏真に口添えし、ついに井伊が気賀を治めることとなる。

第27回「気賀を我が手に」|あらすじ|NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』

 

今週の雑感

関口さまがこれまでと違っておもしろキャラになってたり、方久が種子島づくりで駿府に頻繁に出入りしてたお陰でいろんな情報に敏感になっていて、関口さま調略の方法を考え出したり。

 

気賀では中村屋が熱いキャラの人たらしで龍雲丸をその気にさせてました。あの雰囲気、いいなぁ、得難いなぁ。家臣や周辺の人々、ほんとに直虎大好き。

 

武田と今川の間に流れる緊張から一時は気賀を諦めかけたものの、とうとう城を!!!それも龍雲党の普請で!皆の表情がとても明るい回でした。

 

囲碁 

囲碁の場面が3回もありました。今までの囲碁シーンは静かに指していただけだったのに、今回の1回目、碁盤にやってきて座り、始める。2回目は途中で。3回目は直虎が自分の碁石を全てしまった後、先に席を立っていき、残されていたのは政次の黒い碁石

  

囲碁で何を表したんだろう…?気賀獲りの為のステップ?それとも、もうふたりの補完関係、秘密の関係が終わるということ…?最後の、黒い碁石だけが残ってその前に座る政次が気になってしょうがない。

 

ひとつわかっているのは、囲碁を通して、やはり政次が直虎を導いている、ということなのかなぁ。今回も、気賀に対してどういう姿勢でいくのか、最後は直虎の気持ち次第だ、と覚悟を促す。

 

政「あとは殿のお心ひとつ」

 

虎「我の」

 

政「気賀を預かりたいか、否か」

 

虎「できることなら、気賀の者たちに報いてやりたいとは思う」

 

政次の名家老ぶりを表してるなぁと。

 

気賀獲りを不安に思っている直虎に対し、是非やりなさい、とは言わない。あくまでも、直虎の気持ちが大事、それがしっかり持てれば、自ずと形になっていく…と。

 

「還俗して俺と一緒になるか」と問い詰めた時に直虎に言ったのは、「覚悟がないのなら寺で経でも読んでおれ」だった。

 

直虎が領主となり虎松の後見をすると宣言したときも、「国を治めるのは生半可なことではございません。次郎法師さまにはどこまでの覚悟がおありか、その辺いささか」と疑問を呈していた。

 

いつもいつも、政次は彼女への気持ちを隠して、井伊の為に直虎がどれほどの覚悟をもって臨んでいるのか、それを突き付ける役目を自ら負っている。寄り添うのではなく、時には直虎に覆いかぶさる敵に変形までして直虎を本物の領主にしようとしてきたのだなぁ… 

 

 

領主として

以前、瀬田村の農民たちが年貢納めに困り果て徳政令を出してくれと、領主になったばかりの直虎のところに直訴に来たことがありました。その時、直虎は二つ返事で安請け合いしてしまい、大失敗。

 

今回冒頭で、気賀の商人たちがやってきて、直虎に気賀を治めてほしいとの嘆願に、すぐには返事はせず、一晩考えさせてくれと返事をしていました。すぐには決断せず、周りの意見も窺う姿勢。それを廊下で聞いていた政次の顔のアップ。満足そうな、直虎の成長が嬉しく、でもその嬉しさを押し隠すような表情で…でも隠せてない。

 

対比で畳み掛けてきますよねぇ… その後の直虎の領主ぶりを。

 

 

 集大成

今回の感慨深さというのは、やっぱり直虎が領主になってからの道のりをずっと眺めてきて、これまでの集大成を見ることができたということに尽きると思うのです。

 

 

「 死んだ者を己の中で生かす」

「正解不正解などない世界で己の信じたものを灯りとして進む」

「皆の智慧を借りるだけ借りる」

「 戦に戦わずして勝つ。もしくは戦いに及ばずとも済むよう死力を尽くす 」

「道は必ずある。必ず。」

 

領主から城主への軌跡。

 

和尚の導き。六左の献身。之の字の忠義。方久のしたたかさ。龍雲丸の信念。政次の冷静さ。そして直虎の愛されキャラと敵にも味方にも発揮される人心掌握能力。

 

全てが積み上げられ、周りの国や気賀の商人も巻き込んで、とうとう氏真から気賀を任せるとの下知を方久が持ってきたときは、あああああああ

 

政次が言ってきた「戦わずして勝つ」が現実になった瞬間が見れた…

 

それなのにその喜びの輪に政次は入れないっていうのが…

 

 

許されたい

気賀を任されたと知った政次は、井戸でとても穏やかな顔をしてました。

 

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おとわが気賀を獲ったぞ…!!

 

直虎を「おとわ」と呼び、顔を上へ向け報告する。この時、誰に報告しているかは明白で。

 

政次が井戸に来て手を合わすのはこれまでも描かれていました。12話で、直親の死直後、駿府から戻って来た折、井戸にいた次郎法師と鉢合わせたときも、まず手を合わせていましたし、18話で直虎がようやく政次の真意に気付いて井戸にやってきた時も、政次は天を仰いで誰かに話しかけていました。

 

武田が今川を切り崩しにかかった… 恐らく今後井伊は松平と武田と今川の思惑に揺り動かされる厄介な土地となっていく。あいつの夢枕にでも立ち、言うてくれぬかの、亀。「危うくなる故、早く下がれ」、と。

 

「亀」

 

政次が闇落ちをしたと思わせておいて、実は全てが井伊のためだった。そしてこの時だけではなく、きっといつもこうやって井戸に来ては、「亀」と呼びかけ、「おとわ」の事、井伊の事を逐一報告してきたんだろうなぁと鮮やかに余白を想起させる。

 

今回の嬉しそうな、まるで鶴に戻ったかのような表情は、直親が死ぬ前に幼馴染3人で井戸端で大笑いしていた時の事を思い出します。

 

この政次の表情を見ていて思ったことがありました。

 

政次は、ずっと井伊家と今川の間の目付け(家老)の家のものとして生きてきました。自分の父親のせいで直親の父が死んだことを目の当たりにし、自分と井伊家との関係の縺れや無力さを感じ、出自のどうにも逃れられないさだめに苦悩してきました。

 

しのの父、直親の義父の奥山殿も、意図してないにしても結果だけみれば自分が斬ってしまった…

 

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「次郎様に助けてもらう義理はない」

 

幼馴染との関係を誰よりも大事に、そこだけを頼りにしてきたのに、その幼馴染の親をふたりも死に追いやってしまった、と苦しさを吐露する政次を、竜宮小僧の務めだから助けたい、と強く言い張る次郎法師(直虎)を見て、政次の表情は変化しました…

 

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自分の罪(けして自分のせいではないけれど)を誰かに許してもらえた、という喜びとも嬉しさともなんともつかない、切ない表情。

 

いつも井伊家のひとたちから毛虫のように嫌われてきた小野という家に生まれた者にとって、直虎だけは自分の味方だと… そこにどれだけ救われてきたか。

 

しかし、政次の苦悩は終わらず… 幼馴染の直親を、自分の生命線とも言うべき幼い頃の思い出そのものを、井伊の為とはいえ自分が裏切って(どうしようもない選択の末)死に追いやってしまった… その罪の意識はいかばかりかと。そんな思いをずっと抱え、誰にも打ち明けずに誰にも頼らずにひとりで生きてきた政次。

 

そんな政次はきっと許されたかったに違いない。直虎にだけはわかってほしくて許してほしくて…

 

でも、12話、井戸での会話でどれほどその心を抉られたことか…

 

虎「みんな死んでしまったのに政次だけ助かったのじゃな。何故じゃ。どうやって助かった?直親はな、虎松が生まれたとき、それは嬉しそうにしておった。これでふたりで井伊を作っていけると、そう思っておったと思う。裏切る、裏切るつもりで裏切ったのか。それとも、裏切らざるを得なかったのか。どちらじゃ!鶴!!」

 

政「恨むなら直親を恨め… 下手を打ったのはあいつだ

 

 
闇落ちした(と思い込ませた)政次の心中が… 直虎が裏切ったという前提で話をしていることもですが、「これでふたりで井伊を作っていけると」ここのふたりとは親虎のふたりなわけで。政次は入らない… ずっと幼馴染3人で仲良くやってきたのに、結局亀とわのふたりの間には入っていけない入れさせてはもらえない事実を今更ながらに突きつけられる政次、グサグサ刺されてる。

 

そんな政次が、18話で、ずっと秘していた闇落ちの真意をようやく直虎が理解したことで、すこしだけ報われ、そこから二人三脚で井伊のために働いてきました。そんなふたりの関係は、25話でまた新局面に入り。

 

自分の体を痛めつけてでも井伊を守ろうとする直虎の頬に手を伸ばす政次、

 

政「俺の手は冷たかろ」

虎「うむ…血も涙もない鬼目付けじゃからの。政次は…昔から…誰よりも冷たい…」

 

 

この、昔から誰よりも冷たいという直虎の言葉。言葉どおりの会話をしてこなかったふたりにとって、昔から(こどものころから)政次のことはよおく知っているんだよと言わない代わりの表現… ここできっと政次はいろんなことが許されたと感じたような気がするんですよね。なぜなら、直虎が「昔から」という言葉を使って、「冷たい」と現在形で言ったから。過去からずっと、どんなときでも、今も、「冷たい」。これほどの愛情表現を直虎から聞けるとは。

 

そして今回、気賀を手中に収め、喜びを隠さない政次は、直親に感じていた罪の意識が少しは薄れたんじゃないかなと。いや、捻じれに捻れた政次の幼馴染2人への思いは直親が死者であるが故に完全にほどけることはないのだろうにしても、残されたものとして、おとわを守る。井伊の為に生きる。そういう、自分が自分に課した使命みたいものをひとつ実現することができて、ほっとしたような、清々しい顔が眩しかったなぁ。背負っていたものを少し下ろして、新しい城で直虎の隣に立つ嬉しそうで誇らしげな政次が幸せそうで何よりでした。

 

最後に

ここまで上首尾に事が運び、最高に明るく嬉しいこの回は、ある意味ご褒美回だったかもしれません。でも以前、このように全てがうまくいきそうに見えた瞬間にがらがらと崩れ落ちた展開を知っているので、この先の周辺国の動きなどが井伊にもたらすものの脅威を余計感じて震えます。

 

hydrangea.hatenablog.jp

 

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お越し下さりありがとうございました。

 

今回は書くのに時間がかかりました…

 

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