変わり続けるもの変わらないもの ~25回 おんな城主直虎~
金曜日ですね。相変わらずまた書きます。
今川から、木材を三河へ流した咎で申し開きしなければならなくなった直虎は、家臣に木材を取り戻すことを命じて駿府へ向かいます。
できるだけ時間が欲しいため、実際薬を飲み病に伏せることで今川の家臣関口を騙すことに。この薬を飲む時の、苦しそうで心配そうな之の字の顔がたまりません…
そして、案の定疑う関口に、流行病であったなら事だから、と改めにいく政次。
なるほど。ここであの場面…
なぜ政次は頬に触れたのか
今までも書いてきたのですが、政次にとって直虎は聖域で不可侵のようなものだと私は考えてきました。
直親を死に追いやったことで、どうしようもない罪悪感と向き合い、ふたりでいてもいつもそこには死んだ直親がいて、思いを伝えるどころか、そんな思いを持ってしまうことさえも禁じているかのような…
それを今回、なぜ頬に触れたのか。
しょうがないこととはいえ、直虎自らが自分の身体を生贄にして時間稼ぎを図る。そう言えば、船にぐるぐる巻きにされていた龍雲党のゴクウ、名前の由来は人身御供だそう。この回のひとつのテーマでもあるようで…
熱を出し、真っ赤な顔をしている直虎を見た政次が苦しそうで苦しそうで、これまでも苦悩の表情は見せてきたけれど、ここまでってありましたかね。
政次がこれまで、全ての十字架を背負い、誰からも理解されずとも良いと思って生きてきたのは、とりもなおさず直虎の為であり、自分が辛い思いをするのは全く厭わない彼の急所が正に直虎なわけであって…
自らの身体を痛めつけてでも井伊のために最後まで諦めずに闘う姿勢を崩さない直虎を目の当たりにして、殿として幼馴染として同士として、憧憬、敬愛、尊敬、崇拝様々な思いが錯綜するなかで、とにかく「愛おしいという感情」が「こぼれちゃった」のかな、と思いました。
触れられないひとであったのに、ある意味緊急事態に陥った状況での政次の思いの発露が、躊躇いながら、距離を計りかねながら、気持ちのさざ波のような揺れのようなそんな震えのようなものを見せながら、
「俺の手は冷たかろう」
と、ダブルミーニングの絶妙な言葉。
そして、その言葉を全て理解して呑みこんで返す直虎の台詞が
「ああ、血も涙もない鬼目付だからの。政次は… 昔から… 誰よりも冷たかった」
18回で、ふたりが井戸端で共闘する道を選んで以来、直虎は政次の表に見せる顔の裏にあるものを誰よりも理解していて、表面に現れる言葉だけじゃない奥の奥まで分かり合ってきている。プラトニックなのに、身体を重ね合うよりも遥かに濃密で官能的。或いはプラトニックだからこそか。
そんなふたりだけの世界を見せつけられ、観てる方はどうにもこうにも、どこにこの思いをもっていけばいいの状態… になりましたよ…
これに続く今川氏真の前でも直虎の領主としての矜持を見せつけ、政次の目付けとしての一瞬の揺らぎも表し、このふたりの関係の表と裏、その混ざり具合がたまらないし、来週の予告では、またイノシシ直虎がぶり返したようで、裾を踏まれ、何処の当主か、と怒られ、あらら、今回ギリギリの状況に至ったのに、まだ直虎は… ああ、なるほど。気賀。龍雲丸が現れるのね…
少しずつ変わりつつ、且つ根底には変わらないものがたゆたい続け、戻ったようにも見えたりしつつ、螺旋のように進んでいくふたりの辿り着く場所まで目を離さず見ていようと思います。 怖いけど…
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